Association for Renovation of Hosei University 55' & 58' Buildings  
 
 
55/58年館に関する様々な疑問を想定して、Q&Aのページを作りました。さらに疑問がございましたら、事務局へお送り下さい。皆様のご協力で、このページを充実させたいと思っています。
     
  Q1) 今後東京に来るかもしれない大地震に対して、いまの55/58年館は大丈夫なのか、どのような補強が必要なのかを知りたい。
  A:

この問題に対しては、大学で耐震診断を行っており、それに対してデザイン工学部建築学科の構造の先生が、検討をおこなっています。少し長くなりますがここに引用します。

<総評>
 55/58年館は明快で余裕のある設計が行われており、致命的な欠陥は見当たらない為、適切な耐震改修を実施することで十分な耐力を確保できる。また、現在耐震改修工法は著しい発展と実績を重ねており、建物の意匠に沿った様々な改修工法が選択可能である。55/58年館のリノベーションによる再生は技術的、施工的観点からも現実的な提案といえよう。

<55年館>
 短手方向(梁間方向)は耐震性OK、長手方向(桁行き方向)は3,4階以外で耐震性OKである。
 3,4階は階段教室の為他の階より階高が大きく、長手方向において剛性を確保する目的で、柱中央部を垂れ壁で繋げている。しかし垂れ壁は強靭である為、大規模な地震力を受けると柔軟な曲げ変形を拘束し、柱中央部分は脆性(脆い)破壊を起こす可能性がある。
 現在の設計法では柱に対し靭性(粘り)のある曲げ変形を確保することが重要とされる。当該箇所は単に垂れ壁と柱の間に構造スリットを設けて連続性を絶つか、壁を取りさるのみで十分な耐震性が得られると考えられる。これは補強というより、耐震阻害要因を取り除く改修として捉えられる。

<58年館:本館>
 短手方向(梁間方向)は全館で耐震性OKである。長手方向(桁行き方向)は1階を除き耐震性OKであると耐震診断されている。1階は図面及び、現場視察から壁量もあり強度上の問題があるとは考えられない。但し、学生ホールは2層吹き抜けで階高が大きい。この部分の梁間方向の層間変位を抑えるために何らかの剛性が必要である。吹き抜け両端の構造壁(梁間方向)の剛性割り増しなど、内部空間を損なわない耐震補強が可能と思われる。

<58年館:北側3層棟(ピロティー棟)、南側2層棟>
 両棟とも美しいシェル構造屋根を有している。南側2層棟の南北方向はスパンが長く耐震補強が必要であろう。
 北側3層棟1階はピロティーになっており、柱群は壁量が皆無で、現在の想定地震入力に対しては剛性が不足していると思われる。四隅の柱間に鉄骨十字型ブレース補強を施すなど、建物の意匠に沿った様々な構面補強が選択可能である。

     
  Q2) 今回の地震で雨漏りがしているそうですが原因は何ですか?
  A:

 今回雨漏りしている場所は、7階の55年館と58年館のエキスパンションジョイント部分(※1)です。55年館と58年館は建設年度が違うので、つなぎ目の所をエキスパンションジョイントとしています。この部分は地震の振動で動くようになっているので、屋上の防水が部分的に破断したのではないかと思います。防水の納まりを改良すれば問題はないと考えます。

※ 1エキスパンションジョイントとは、地震の時に揺れ方の違う建物の二つの部分を構造的に一体にしないで、お互いに自由に動くように縁を切っておく方法。ジョイント部分は隙間が空いている状態になるので、床や壁の部分は動きを拘束しないカバーを被せておく。屋上部分も防水性のあるカバーで雨が廻らないようにする。

     
  Q3) コンクリートが割れたところがあるそうですが問題ないのでしょうか?
  A:  コンクリートにひびが入って、小片が取れたところは、本館とピロティー棟の間、学生ホールの吹き抜け上の梁部分と聞いています。
 本館とピロティー棟は、建物の大きさ、構造が異なるので、やはりエキスパンションジョイントになっています。但し、エキスパンションの状態が十分でない為に、お互いに干渉して、ジョイント部分のコンクリートが一部割れたものと思われます。
 改修の時に、もっとはっきりと縁を切るようなエキスパンションジョイントにすれば問題はないと思います。
 学生ホールも教職員食堂の部分との間はエキスパンションになっており、教職員食堂側からの梁の上に、本館側の梁が乗るような形になっています。この部分の縁の切り方が十分でない為に地震時の揺れでお互いが干渉して割れたものと思います。ここも同じ様なエキスパンションの改良が必要だと思われます。
     
  Q4) 何箇所かでガラスが割れたようですが、問題はないのですか?
  A:  ガラスが割れたのは、開閉できるサッシではなく、嵌め殺しのサッシ部分のようです。
 サッシ枠とガラスの間のクリアランスが少ないため、建物の変形に対してガラスが追従できずに割れたものと考えられます。今後の改修の際に、サッシ枠とガラスの間にスペーサーをはさみ、必要なクリアランスを確保するようにすれば問題はありません。
     

 

Q5) 50年以上経っている建物なので、コンクリートの劣化が進んでいて、改修してもこれ以上使い続けるのは無理なのでは?
  A:  コンクリートに関しては、外見上劣化が進んでいるようには思われません。コンクリートの質は、必ずしも昔のものが今のものより劣っているとはいえません。かえって昔の方が品質管理がしっかりしていて、耐久性の高いコンクリートである場合が少なくありません。
 コンクリートはアルカリ性の性質があり、年とともに表面から中性化して行き、劣化が進みますが、55/58年館建設の時代は水分の少ない、中性化しにくいコンクリートを使っていたのではないかと思われます。
 実際には、現場でサンプルを採集して、劣化の度合いを調べる必要はあると思いますが。
     
  Q6) 建て替えないと不便は解消されないのでは?
  A:

 「不便さの解消」の方法は、大きく3つの方策での対応が考えられます。ひとつは面積的調整(床面積の増大化、再配分など)、二つめは設備機器・家具什器備品等による更新、三つめは平面計画の更新(諸室の再配置など)です。

・ まずは、「不便さ」の要因を正確に把握することが必要です。その上で方策を検討することになりますが、55/58年館はリノベーションという手法によって充分「不便さの解消」は可能です。62年館(現市ヶ谷田町校舎)のリノベはそのことが可能であることを証明しています。
・ 法的な許容床面積床面積には限度があり、床面積の増大化は、建替えによっても大きくは望めません。511教室の棟などの一部建替えを視野に入れたリノベーション計画で、充分に対応可能です。
・ また、建替え計画は、決して自由な計画を許すものではありません。それは、市ヶ谷キャンパスを使いながらの新築工事となるため、新築建物を計画する余地が限られることに由来します。(解体を最小限にして、余地をつくり、そこに新築し、完成後残りを解体という手順)
・ 一部建替えを視野に入れたリノベーション計画によって、建替えと同様な「不便さの解消」が達成され、持続可能な社会要請への対応ができ、かつ大学のアイデンティティの確保と社会の共有財産たる建築文化の継承も可能となります。

     
  Q7) もう決まったことだから、解体は仕方ないのでは?
  A:

 現在の建替え計画は、1989年に基本プランが作られた市ヶ谷再開発計画に端を発しています。20年以上が経過しています。その間、世界(あるいは日本)を取り巻く環境は大きく変化し、目指すべき社会像や価値観も変わりました。「持続可能な地球社会」を目指し、それに貢献することがもはや共通認識となっています。また、今回の原発事故を含む大震災は、私たちに、過去の判断や価値基準の見直しを迫ってもいます。「過去に決めたこと」ということに幽閉され思考を停止することは、許されないように思います。

・ 20年以上の時は、技術の進化ももたらしています。建物の耐震性能を含む機能更新の具体手法も、現在は多くのメニューを手にしています。スクラップアンドビルドに固執することなく、21世紀の現在の社会的状況や価値感をみすえて、最良の建築計画としてのリノベーションへ変更することのほうが、素直な帰結なのではないでしょうか。

     
  Q8) 保存・再生にこだわるほど値打ちはあるの?
  A:

名建築の条件が、その時代の表象し、最先端の技術や知識を投入し、独自の空間性や美学を伴って、敷地や環境との整合性を保持しながら統合的に具現された建築であることだとすれば、法政大学55/58年館は、まさに名建築といえます。完成当初よりこの建築に与えられた多くの賞や賞賛が、名建築であることのひとつの証左といえるでしょう。今なお、確固たる価値を損なわず清新なたたずまいで、大学のアイデンティティを示しています。名建築はきわめて稀にしか誕生しません。その建築が、50年以上たつ現在まで丁寧に使い続けられてきたことも含んで、奇跡的な僥倖と捉えるべきと考えます。

・ 建築は、社会的記憶装置でもあります。先輩OBと後輩現役学生をつなぐ記憶のよりしろになることもさることながら、建築が存在することによって、学内に留まることのない歴史を顕在化することができます。日本の戦後復興期を表象しうる社会資産としても、再生保存(リノベーション)の価値は、大きいでしょう。
・ 既存建物の価値を考えることを含みながら、まずはスクラップアンドビルドではなく「保存・再生」によって、私たちは何を達成することができるかを考えることが最も重要なのではないかと思います。

     
  Q9) 建て替えでなく、リノベーションの道を選ぶメリットとは?
  A:

建築をつくる方法には、建築主の思い(思想、価値、判断)が反映します。20年以上前に決めたこととして、思考停止した状態を論拠としたスクラップアンドビルドによって建設された建物は、そのようなモノとしてしかメッセージされないでしょう。

・ リノベーションによる再生保存は、手法そのものが「持続可能性」という今日的要請に則っています。その手法により歴史的な建築空間を次世代につなぐことにより、大学のアイデンティティを顕在化し、ブランド構築に貢献することが期待できます。
・ リノベーションによる建築計画のほうが、解体新築にくらべコストがおさえられるでしょう。また、建設時の環境負荷も小さくなります。また、市ヶ谷キャンパスにおける配置計画として、キャンパスとしてあるいは都市的街区としての視点からも、解体新築よりもすぐれたものになるでしょう。

     
  Q10) モダンデザイン建築の価値が良く解かりません。
  A:  モダンデザインは、20世紀はじめのヨーロッパで、当時の新しい社会の変化、思想、産業などの動きに対応して出てきました。日本でも1930年ごろから、プレモダンの優れた建築が作られています。
 現在のようなガラスカーテンウオールを使ったモダンデザイン建築が作られるようになったのは、戦後のことですが、55/58年館はその先駆けとして、建設当時は大きな話題になると共に、多くの賞を得ています。
 55/58年館のデザインの優れているところは、その様な西洋発祥のモダンデザインをそのまま受け入れているのではなく、深いところで日本の美意識の伝統に基づいているからではないでしょうか。そのことが、長い年月を経ても、決して古くならない秘密のような気がします。
 55/58年館竣工直後のロンドンタイムズの評論が的確にそのことを表現しています。これを別のパネルで展示していますので、ぜひ読んでみて下さい。
     
     
 
   
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